美人白書

Vol.22 西田尚美


Jun 25th, 2014

photo_nahoko morimoto
stylist_junko okamoto
hair&make_yumi narai
text_noriko oba
edit_rhino inc.

人気モデルから女優の道へと活躍の場を広げつづける西田尚美さん。やわらかな空気感を放つ今からは想像もつかないくらい、20代のころは白黒はっきり、何でもストレートに主張していたのだとか。人生に起きたこれまでの変化を「空気を読む」「結婚」「考えすぎない」のキーワードとともに教えていただきました。

気負わず、凛と佇む。西田尚美さんの美の秘訣

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大反対を押し切って、広島から東京へ上京。

―― 広島県ご出身とのことですが、上京したのはモデルの仕事をするためですか?

いえ、上京の目的は、”とにかく出たかった”からです(笑)。進路を決めるときに、最初は東京の短大に行きたかったのですが、地元を出ることに親から大反対をされまして…。うちは、父親も親戚も含めて公務員一家だったんですね。ですから、娘にも同じ道をーという思いがあったようですが、高校生の私は「絶対イヤだ!」と。公務員がというよりも、人生のレールを決められる気がして、猛烈に抵抗していたんですね。

―― それで、東京の服飾関係の専門学校に進学することに決めたのですね。

東京の短大はダメだと言われたので、選択授業は、専門学校に進学するクラスを選びました。好きなファッションを学べる服飾関係の専門学校で、しかも地元に分校がない学校を必死に探して。「もうここに行くことに決めたから」と決意表明してみましたが、やっぱり大反対に合いました…。最終的には祖母のひと声で収まりましたが。

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―― 西田さんの上京を巡って、おばあさんまで出てきたのですね。

そうなんです。もう毎日家族会議。「出たい」「いや地元で」の平行線の話し合いに、祖母が「行かせてあげなさい」と味方になってくれて、ようやくみんな納得するみたいな。ただし、卒業したら帰ってきて地元で就職してほしい、とも言い添えられましたが(笑)。どうしても出て行かれるのが嫌だったんでしょうね。

―― 専門学校時代にモデルとしての仕事もスタートします。

といっても、学生時代は事務所には所属していましたが、ほとんど仕事らしい仕事はしていませんでした。そのころは、オーディションに落ちまくっていた時期ですね。本格的にモデルとして始動したのは、卒業後です。

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ブラウス/NEWYORKER BLUE パンツサンダル/NEWYORKER

服が似合うかどうかは、肉体を通して判断します。

―― 専門学校時代はどんなファッションをされていたのですか?

当時は、若くてお金もなかったので、古着をよく着ていました。今では考えられませんが、ミニスカートもバンバン履いて。若いころは、似合ってるのか似合わないのかのジャッジもうまくできず、とにかくあらゆるジャンルの服にトライしてたくさん失敗もしました。今振り返ってちょっと赤面してしまうのは、高校生のころに親にねだって買ってもらったフリル満載の服。あきらかに自分らしくないだろうって、今なら分かるのですけれど(笑)。

―― 西田さんのイメージに全身フリルは遠い気がします。そんな時代も経ていたとは…少し安心します(笑)。

当時、DCブランドブームがあって、ブランドならOK、ブランドものを着ていれば安心という思いがあったのかもしれませんね。あと、高校生らしい計算としては、フリルは親ウケがいいから多少高くても買ってもらえる、と。

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―― 卒業してからはモデルの仕事も忙しくなってきますが、そのころはどのようなファッションだったのですか?

当時はショートカットだったので、ボーイッシュなスタイルが多かったです。ボタンダウンのシャツを愛用していて、パンツでも気に入ったものはカラーバリエーションを全部そろえたり。トラッドなものが大好きでした。定番スタイルが好きなのは、今も変わりませんね。

―― モデルとしてたくさんの洋服を着てきて、若いころから変化したファッション感はありますか?

“体はひとつしかない”という当たり前のことが分かってからは、本当に必要なものを厳選するようになりました。着るシーンやコーディネート、似たような服をもっていないか、など買う前にいろいろと考えて購入します。何よりも大事にしているのは、自分の雰囲気に合ってるかどうかを見極めること。

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―― 雰囲気に合うか合わないかは、どのように判断していますか?

試着あるのみ、です。やっぱり平面で見て”素敵”だと目が感じるものと、自分の肉体が服のなかに入って”似合う”ものは別物だと思うんです。平面で見るとすごくかっこいいのに、着てみると”あれ…なんか変”ってありますよね?

自分に合っているかどうかの空気感は肉体を通して分かるものだと思うのです。なので、私はネットで買ったり、試着せずに一目惚れで服を買うことはできないタイプ。少しでも気になったら試着します。はたから見たら”あんなに買うの?”と思われるくらいの量を試着室に持ち込んで、そこから1着を選びます。

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結婚には人間関係の学びが詰まっています。

―― ところで、今までの人生でこれは経験できてよかったと思うことは何でしょうか。

結婚ですね。

―― ご結婚されたのは、35歳のときでしたよね。

特に結婚願望が強かったわけでもないので、私は一生独身でいるんじゃないかなと思っていたんです。結婚しなくてもそのときに一緒にいるパートナーがいれば幸せだなって。それが、出会って結婚という流れになって、「この流れは、想像していなかったけど…乗っかってみよう!」と飛び込んだのです。

―― ご結婚後、何か大きな”変化”があったのでしょうか。

他人とあれだけ長く毎日一緒に暮らす、そして暮らし続けていくというのは、人間関係を学ぶこれ以上ない実践の場だと思いますね。まだ途中の段階ですし、先のことは分かりませんが、どうやって楽しく続けていくのかは、生きるうえでのミッションのような気がします。自分の何気ない言動が相手を傷つけてしまうかもしれない、こうしたら喜ぶかな、悲しむかなと想像しながら思いやるというのは、すごく勉強になりますし、これまで気ままに暮らしていた私に欠けていたことだったとも思います。

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―― うまく続けるために編み出した秘訣はありますか?

それがあれば教えてほしいくらいです(笑)。ちょっとしたけんかや腹の立つことで空気が停滞しているときは、”菩薩のような気持ちになって”(笑)時が過ぎるのを静かに待ちます。一緒に歩む未来を考えるなら”許す”ことなしには進めないということ、どんなときでも”聞く耳”をもたないといけないということは、肝に命じています。…が、これはあくまで心がけています、という話。

―― というと(笑)?

距離が近い家族に対しては、どうしても顔に出てしまうらしく、受け流しているつもりが「何か納得いかないことあるんじゃない?」と聞かれることも。自分から波風は立てずとも”聞かれたら言ってOK”というのがマイルールなので、質問されたら変に含ませたりせず、はっきりと伝えます。でも、きっと逆もたくさんあると思うんですよ。私のストレートな言い方で知らず知らずに相手を傷つけてしまったこともあります…。そういうときはきちんと聞く耳をもつことが大事ですよね。

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―― 毎日一緒にいると素直に意見が聞けないこともありそうです。

先日も、私の体型に関して、主人からダメ出しが入りました。”もう年齢も年齢なんだからきちんとスポーツジムに行ってトレーニングしないとヤバいよ。こんなこと誰も言ってくれる人いないでしょ”って(笑)。ここは素直に聞こうとジムに入会しましたよ。まだ2回しか行けていませんが。

―― 笑。でも入会したことに素直さを感じます。

これから行かなくては。でも、まとめるわけじゃありませんが、結婚はやはり楽しいものだと思いますよ。テレビを見ていてもひとりだと”クスっ”で終わってしまうことも、ふたりで見ていれば”何これー!”と笑いが増幅したり。なんてことのない時間や莫大にある日常のいろいろな場面を誰かと共有できるのは、幸せです。

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白黒はっきり、ストレートな性格が少しずつ丸くなって。

―― 西田さんは、芯の強いイメージと、一方でナチュラルなふんわりとした印象もあります。

本当? ふんわりだなんてそんなこと言われたことないですよ。もしもそのイメージがあるとしたら、年齢を重ねてから少しずつ丸くなったのかもしれませんね。さきほども言ったとおり、私は昔から白黒はっきりさせたい性格で、若いころは「あの場所でこれをしたい」「あのお店でこのメニューを食べたい」など、何をするにも自分のしたいことや食べたいもの、行きたい場所などをいちいち(笑)はっきりと意思表示していました。

きちんと伝えるほうがコミュニケーションがスムーズだと思っていたんですね。実際、優柔不断の友人からは「尚美ちゃんといるとラク〜」と重宝されていたのですが、大人になると、また違う事情がありますよね。

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―― いわゆる大人の事情という…?

はい。昔は心にひっかかったことを”あえて触れない””流す”が本当に苦手でして。今でこそ空気を読んで”あ、ここは言わないほうがいいのね”と分かるようになりましたが、仕事を始めたころは仕事相手にもずいぶん失礼な態度を取っていたと思います。相手の役職や上下関係も事情もよく分からず、その”分からない”をそのまま悪びれずに言葉にしてしまって。思い出すだけで冷や汗が…。

―― オブラートを覚えるような何かきっかけがあったのですか?

いえ、直接あったわけではありませんが、徐々にという感じです。今でも空気を読んで動くのが得意だとは思いませんが、仕事を通したさまざまな経験のなかで少しずつやわらかくなってきたのだと思います。ただ、はっきりとした性格が本来の姿なので、同性で素敵だな、かっこいいなと思う女性も自分の主張や意見がある潔い人。特にその人ならではの審美眼をもって生きた向田邦子さんや白洲正子さんのような人に憧れますね。

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ワンピース/NEWYORKER

気負わず、現場の空気に漂う

―― 放送中の『Life!〜人生に捧げるコント〜』では、コントをされている姿が新鮮です。舞台やドラマのお芝居と何か違うところはありますか?

ほとんど変わりません。台詞もしっかりあって、アドリブなどもほとんどないので、短編のドラマを撮っているような感じです。普段、芝居をするときは、メイクをして、その役の扮装をして、と外見がつくられていく間に気持ちのスイッチも入れて…と役に入っていくのですが、コントも同じです。その役の衣装とメイクで気持ちがふっと切り替わっていきます。違いといえば、普段かぶらないようなカツラを付けることくらいじゃないかな(笑)。

―― 笑いを…というような意識はあまりないのですか?

ないです。というよりもそういう気負いは持たないように気をつけています。私ね、気持ちを入れ込んだ途端空回りをするんですよ、間違いなく。まったく面白くなくなるのが、目に見えるんです。力が入ると空回りするタイプなんですね。これは経験から断言できます(笑)。共演者の方にもよく「何も考えてないでしょう?」と言われるのですが、その通りで、考えないようにしているんです。すっと入って、パッとやって、またすーっといなくなる。

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―― 何も考えないというのは、実はすごく難しくないですか?

そうですね。あるとき監督に”あまり考えずに、感情を入れすぎないで”と言われたことがあって。それ以降台本を読むとき、台詞を入れるときは”フラット”に、そのほかは現場で肉付けをしていくようになったんです。それまでは、この場面はどうしよう、このときの気持ちは、とあれこれ考えすぎて自分をがんじがらめにしていたのかもしれません。台詞だけは頭と体に入れて、あとは監督や共演者との距離感を見て、その場で肉をつけていくほうが役が動き出す気がします。

『Life〜』でも、現場の空気はみなさんがつくってくれるから、その空間に入れてもらっている感じ。現場に身を投げて漂っているだけです。出演者の方がふわっとした人たちが多いからか、とても居心地がいいですね。

―― 少しずつ変化されてきたのですね。

もともと、自分の言葉で気持ちを表現したりすることが苦手だったことも今の仕事につながっているのだと思います。「これが好き」とか「嫌い」とかそういう判断を伝えることには抵抗がないのですが、思いや感情を表現するのはとても下手なんです。”自分が言わんとしていることは、どうやって伝えたらいいのだろう”って考え始めるとドキドキしちゃうくらい、苦手。ですから役を通して、表現したり、伝えることに充実感も感じますし、演じていてとても楽しいんです。


最後に西田 尚美さんから
“美しくなるためのメッセージ”

角張った石が水の流れにもまれて、少しずつ角が取れて丸い石になるように、ファッションも言動も考え方も少しずつまろやかになってきました。まわりの人や大切な人の声に聞く耳をもって素直に受け入れること、それが大人になることなのかもしれません。これからの人生にはどんな変化が起きるのか、それも楽しみです。

今月の美人
西田 尚美

女優。広島県出身。文化服装学院卒業。卒業後は女性ファッション誌『Junie』『PeeWee』『an・an』『nonno』などで活躍。ボーイッシュな雰囲気と華奢なスタイルが多くの女性から熱い支持を集める。93年『オレたちのオーレ』で女優に転身。ドラマ『紙の月』『連続テレビ小説マッサン』や映画『百瀬、こっちを向いて』『WOOD JOB!~神去なあなあ日常〜』など話題作へも次々と出演し、CMや舞台などでも活躍。 http://www.nishidanaomi.net/

Vol.23 島本麻衣子

Vol.21 永山祐子


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