美人白書

Vol.30 柴田陽子


Feb 25th, 2015

photo_nahoko morimoto
text_noriko oba
edit_rhino inc.

ローソンの「ウチカフェスイーツ」シリーズや渋谷ヒカリエのレストランフロアのブランディングなどを手がけ、各界から注目を集める柴田陽子さん。山ほどの案件を抱えながら、ふたりの子育ても真っ最中。超多忙な毎日の時間の使い方や仕事をうまくいかせるための考え方、驚きの美容習慣についてお伺いしました。

毎日を分単位で駆け抜ける、
柴田陽子さんの美の秘訣

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“見込み違いだった”と思われたくない

――柴田さんが「柴田陽子事務所」を立ち上げたのが32歳。何がきっかけだったのですか?

20代後半のときに、ふとこの先のことを考え始めたんです。仕事自体は楽しいけれど、深夜2時3時まで働く今の生活は体力的にもキツいし、いつまで続けられるか分からない。結婚もしたいし子供も生みたいけれど、今の働き方をしていたら難しいかも…。私これから先どうなるんだろうと、次から次へと不安が浮かんできて、あるとき知り合いに相談したんです。そうしたら「独立したらいいじんじゃないですか」とあっさり言われたんです。

――それまで独立は考えていなかったんですか?

まったく考えていませんでした。独立思考がそもそもなかったのですが、その後クライアントさんからも言っていただき、32歳のときに会社を立ち上げました。当時、有限会社にするための資本金の最低額が300万円だったので、貯金すべてを使って設立。10年前ですね。

――小さいころからリーダー気質の方かと思っていました。

今だって、みんなをぐいぐい引っ張っていくタイプではないですよ。ただ、小さなころから今も変わらないのは“責任感の強さ”かもしれません。「友達と約束したから体調悪くても行く」とか「先生に頼まれたからやらなきゃ」とか、約束したことに関しては、絶対守らなくてはと思っていました。よく「小さい時から好奇心が強かったのですか?」と聞かれるのですが、それは違うというか、当たり前だと思うんですよね。

子供ふたりを育てていて思いますが、好奇心はどの子にも強くあります。ただ、同じ兄弟でも責任感には差があると感じます。振り返ると私はその部分が強かったと思いますし、今でも私の特徴なのかもしれません。

――責任感はどこから沸いてくるのですか?

“見込み違いだった”“がっかりした”と思われたくない、相手の期待に応えたいという気持ちからです。今、クライアントさんに対して思うのと同じ気持ちですね。

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理想の私だったらどう考えるだろう。

――会社を設立した当初は、どんなことを大変だと感じましたか?

大変ですか。なんだろう…特にないですね。もちろんこの10年すべてが順調というわけではありませんでしたが、自分から「大変大変」って言うのは、能力が低いって思います。もちろん10年ずっと会社が順調だったわけではなく、大ピンチのときもありましたが、大変という感覚はないんですね。なんて言っていると「柴田さんって、ポジティブですよね」と言われたりするのですが、とんでもない、私は昔、相当ネガティブでしたよ。

――そうなんですか?

たとえば、遠足の前日も「楽しみ!」という気持ちよりも先に「雨降ったらどうしよう」「バスが来なかったら大変だ」とか、心配ごとや暗いことをパッと思いつくんですよ。でも、まわりを見ていると意外にみんな明るいことを瞬時に言うし、思っているんだなと思って「私って暗いんだ」と自覚しました。それで、あるとき、暗い人って世の中の迷惑だと思って、訓練したんです。

――ちょっと待ってください、訓練って何を?

頭のなかに“理想の柴田さん”を思い描くんです。自分が最初に思いついた暗いことは一度脇に置いて、「理想の柴田さんならどう考える?」「最高の柴田さんならどう感じる?」を頭に浮かべるんですね。それで、出てきた答えに従って“行動する”。それを繰り返しました、常に。

――理想の柴田さんとはどんな人なのですか?

強くて、優しくて、ポジティブな人。18歳くらいのときからそうやって鍛えたので、もう今は理想の柴田さんに変換しなくても、自然とネガティブなことは思いつかなくなりました。

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仕事中は、5分の空き時間も嫌。

――ところで、出産の当日まで働いていたというのは本当ですか?

上の子は出産当日まで働いていて、下の子は週末に生まれましたので、前日までかな。病院に着いてからも電話でスタッフと打ち合わせていたのですが陣痛が来たので中断して。出産後お母さんと赤ちゃんがふたりきりになる“カンガルーケア”の最中に、こそこそかけ直して「ごめんごめん、さっきの話だけど」と打ち合わせの続きをするという(笑)。出産後4日目にはここに座っていましたね。やってできないことはありませんが、決しておすすめはしません。

――すさまじいですね。さきほど柴田さんのスケジュールを管理しているスタッフの方が「スケジュール帳に5分でも空きをつくったら、なんで?と聞かれます」と言っていましたが、本当ですか?

はい(笑)。スケジュール管理は徹底しています。予定を立てるときは5分単位で書き込める大きなスケジュール帳を広げて、あらかじめ予定が入っている場所に×印を付けていきます。土日は家族と過ごすので、×。火、水、金の夜も×、というように。残ったところは、数分たりとも無駄な空き時間ができないように組みます。

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――月曜と木曜の夜は×印が付いていないのですか?

平日の夜をすべて家で過ごしたら、会食にも出られない、新しいお店にも足を運べず、トレンドも分からなくなってしまうので、平日のうち、家で過ごすのは週3日です。これはまわりの人の協力の上に成り立っていることなのですが。

上の子が生まれたときに義理の母から「陽子さん、困ったことがあったら力になるから何でも言ってね」と言ってもらって「お気持ちはうれしいですが、何でも言ってと言われても、やっぱり言いづらいですよそれは(笑)」と返しながら「何言ってるの、本当に言いなさいよ」というお義母さんに甘えて、本当にお願いしてみたのです。

「お義母さんにとって、孫に会えたら嬉しい、でもお世話が苦にならないというのは、どれくらいの頻度……でしょうか?」おそるおそる聞くと、お義母さんも小声で「週……1回?」(笑)。「それは、だいたい何時くらいから来ていただけそうですか?」「そうね……ご、5時でもいい?」と(笑)。さらに交渉は続きまして。

――緊迫感ありますね、ドキドキします。

「週に1度来ていただけるなら、曜日も決めてもらってもいいですか? やってみて曜日とか時間の約束をするのは、億劫だわって思ったらすぐに辞めましょう」と提案しました。

それで、お義母さんが月曜日、私の母が木曜日の17時〜21時まで家に来てくれることになりました。そのおかげで週に2回、夜の時間があるのです。私は夜に時間ができることで会食や視察に行くことができ、おばあちゃんたちは、孫と仲良くなっておばあちゃんライフも楽しい。もしかしたら私が同じ空間にいないほうが叱りやすかったり、抱きしめやすかったりすることもあるかもしれません。お願いする方も頼まれるほうもみんながうれしい、そんな “企画”だったからみんな気に入ってくれて、6年目です。

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そのトラブル…大勢に影響なし!

――交渉場面を想像して勝手に緊張してしまいました(笑)。

ママ友にも「お義母さんにそんなこと言えるなんて」と驚かれました。でも、何もしないで大変大変って騒いでいても仕方ないですよね。自分だけではどうにもならない、力を貸してもらいたいときは正直にお願いするしかないと思うのですが。何かをうやむやにしたり、見ないふりをしたり、そういうのができないんです。

――トラブルを抱えて相談に来たり、問題を起こしたスタッフによく言うことはありますか?

仕事において、一点の曇りがあることもイヤなので、問題が起きたときはどの地点に問題があるのか、根本的な問題にさかのぼって考えます。私は自分のファッションブランド“BORDERS at BALCONY”をやっているのですが、たとえばサンプルがあがってきたときに縫い目が曲がっていたとしますよね。縫製がよくないということは、工場で雑に扱われている、贔屓にされていないということなのか?とか。

さらにそれはなぜか、「ロット数が少ないから」「この時期の発注は混み合っているから」「担当者同士がコミュニケーションできていないから」…どこで問題が起きているのか。細かく聞いたり、アドバイスしたり、叱ったりしますが、最終的には「大勢に影響なし」が多いのですが…。

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――最後にそう言ってもらえたら、楽になりますね。

だといいのですが。でも、一緒に働いているスタッフは緊張感あると思いますよ。先日も大きな雷を落としたばかりで(笑)、ファッションチームのスタッフが、工場からあがってきたサンプルの洋服をアイロンもかけずにシワのある状態で私に見せたんですね。デザイナーに仕上がりを見せるときに、服をベストな状態にせずにシワのままハンガーにかけるとは、どういう神経をしているんだろう、アイロンをかけるかけないの話だけじゃなく、きっとこのチームは大きな問題を抱えているに違いない(笑)と、また“根本はどこだ”と考え込んでしまいました。

先ほどの縫製のように、モノが問題ならすぐに治せるし、解決できますが、そうじゃないところは本当に難しいです。こと仕事への姿勢に対しては気になったらとことん追求します。すごく怖いと思われているんじゃないかな。その部分は厳しいです。

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毎朝5時起きでエクササイズ

――柴田さんはどんな女性を魅力的だと思いますか?

自分に厳しいところが、外に伝わってくる人は素敵だと思います。自分に対して厳しく、ストイックに接することができている人って、外見にもそれが出ると思うんですよね。美しく見えるというか。そういう人からたくさんのエネルギーをもらっています。私も、本能の赴くままにいたら、だらしなくなってしまうタイプなんですけど、「自分に厳しくしなきゃ!」と思って。でも、それを律するのって本当に大変で、苦労しているんですけどね(笑)。スタッフにも、「自分には厳しくいようね」とよく話したりしています。

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――柴田さん自身は、何かエクササイズなどはしていますか?

毎朝5時に起きてトレーニングをするのが日課です。ストレッチをして、加圧ベルトを巻いて腹筋や背筋などの筋トレなど、1時間みっちり体を動かして出社します。もう何年も経ちますが、一回サボったら終わると思っているので、どんなに遅く帰った日も翌朝は5時。深夜2時に寝るときに「果たして、睡眠削って5時に起きるのが美容にいいのか」悩むこともありますが(笑)。

そのほかにもピラティスに通っていますし、食べものも気をつけています。朝は低速回転ミキサーで酵素が壊れない野菜ジュースをつくって、夜は炭水化物を抜き、サプリも飲んでいます。

――いやいや。圧倒されました。自分に厳しい人が素敵、とおっしゃるのも納得です。

そんなに一生懸命やってこの状態ですかというのは、突っ込まないでいただきたいのですが(笑)。もちろん何もやらないでキレイだったらそれがいちばんいいんですけどね。落ちぶれないようにという一心です。

――褒められたりして、緩んだりはしないのですか。

とんでもない。褒め言葉に対しては、まったく素直じゃないんです。うれしいけれど、全然本気にしませんし、調子にも乗りません(笑)。それにエクササイズもお肌のお手入れも、最初はつらく感じたり、面倒に思っていても、それが習慣になればきっと美しくしてくれるはず…と信じて、努力を怠らないようにしています。


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最後に柴田陽子さんから
“美しくなるためのメッセージ”

私は「習慣こそ、その人の質」だと思っています。物事を始めるときは、これは習慣になるかなと考えてから始めます。少しずつルールを増やしてそれこそがその人の個性となる。“理想の柴田さん”も“毎日5時起き”もそう。今、トレーナーから有酸素運動を増やした方が効果的という提案もあり、近々自転車漕ぎという習慣がもうひとつ加わるかもしれません(笑)。

今月の美人
柴田陽子

ブランドプロデューサー、柴田陽子事務所代表取締役。大学卒業後は、外食企業に入社し、新規業態開発を担当。 その後、化粧品会社での商品開発やサロン業態開発なども経験し、2004年「柴田陽子事務所」を設立。ブランディングプロデューサーとして、コーポレートブランディング • 店舗プロデュース • 商品開発など多技に渡るコンサルティング業務を請け負う。 セブン&アイ・ホールディングス「グランツリー武蔵小杉」総合プロデューサーを務める他、東急電鉄「ログロード代官山(2015年春開業)」「渋谷ヒカリエ レストランフロア」プロデュース、2015年ミラノ国際博覧会における日本館レストランプロデュース、パレスホテル東京「7料飲施設」、ローソン「Uchi café Sweets」、ルミネ、日本交通などのブランディングに携わる。また、都内にて飲食店を直営店として経営。 「自分が本当に納得のできる、ものづくりがしたい。」という思いから、理想の洋服作りをはじめ、2013年秋「BORDERS at BALCONY」を立ち上げる。
http://www.shibajimu.biz/

Vol.31 中川正子

Vol.29 観月ありさ


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