TRADITIONAL STYLE

Vol.18 北村一輝


Feb 12th, 2014

photo_shota matsumoto
text_jun takahashi(rhino inc.)

先日公開された日本とインドネシア初の合作映画「KILLERS」では主演を飾り、日本に留まらず海外からも注目を集める俳優・北村一輝さんにインタビュー。猟奇的な殺人者から歌舞伎町のホスト役まで、幅広く演技をこなす北村さんが、そもそもなぜ俳優として向き合うことになったのでしょうか。

映画に魅せられた少年時代。

ー 北村さんはどんな少年時代を過ごされていたんですか。”北村一輝”とWEBで検索すると海賊に憧れて役者の道を歩み出した、といった情報も出てきます。

北村一輝 普通に活発で元気な子でした。兄や両親が映画好きで、映画館によく観に連れて行ってもらいましたね。当時はスピルバーグの作品が全盛のころで、小学校のときからジョーズ、スーパーマン、スターウォーズ、インディー・ジョーンズなどを片っ端から観ていました。主人公たちのあまりの格好良さにこういう人たちになりたいと小学校のときに強く感じていました。

ー そうなんですね。海賊まっしぐらなのかと勘違いしていました。

北村一輝 これまでに観た映画の中に海賊作品もあれば冒険者もあります。ただ、単純に主役に憧れる子どもではありませんでした。例えばスターウォーズだと主役のルーク・スカイウォーカーではなく、ハリソン・フォードが演じたハンソロとか。ちょっとアウトロー的な人に魅力を感じていました。

ー ストレートに主役、正義の味方っていうより、それを支える脇役で、かつキャラクターのある人に憧れていたんですね。

北村一輝 そうですね。今でも脇役が持つ魅力というのもあると思っています。

自分の常識、世界の常識。

ー これもWEBの情報なのですが『海賊になりたくて商船高校に入学、海賊という職業がないことを知って退学。その後俳優になりたくて上京した』というエピソードが有名です。

北村一輝 話が膨らんでいますよ(笑)。船の学校に入学したのは、海賊に憧れていたからと、船に乗って世界中を旅してみたかったからです。僕の考える『常識』は日本の常識であり、まだまだ世の中には自分の知らない『常識』がたくさんあるはずだ、とずっと思っていました。きっとそれは、田舎の限られた環境しか知らなかったからで、もっと自分の知らない広い世界を自分の目で見て、いろいろ感じたいと、子どもの頃から考えていました。

ー 戦国大名からチンピラ役まで、役を固めずにいろんなジャンルにチャレンジしている北村さんらしい考え方ですね。

北村一輝 演じたことのない役柄でも、その役になりきって精一杯やるだけです。そしてある程度楽しんでやることで、次に繋がるオファーも少しずつ頂ける様になりました。

役になりきるといっても、監督の演出あっての役ですので、例えば監督が24色の中でオレンジがいい、と言ったら自分なりの一番良いオレンジ色になる。その監督の『常識』を理解し、外さないようにします。他の魅力的な色でも意味がなく、全体のバランスの中での僕の立ち位置を見つけます。

6年ぐらいくすぶっていた下積み時代。

ー 上京した後、すぐに俳優になれたんですか?

北村一輝 全くダメ。無知でしたので行けば普通に事務所に入れて貰えると思っていました。もちろん、そんな簡単に入れて貰える事務所なんてありませんでしたね。

ー いきなり芸能事務所に行ったんですね。

北村一輝 何も考えずに行動してました。上京しただけで何の準備もせず、とりあえずバイト探し。住む所もありませんでしたので、バイト先に住み込みで、芸能事務所の面接を受けましたが、全然ダメでしたね。結局ひとりでオーディションを受け、エキストラからでした。すごく背伸びをしたいし、自分の中で焦りもありましたが、どうしようもなくて。そこから少しずつです。

ー その期間はだいたいどれくらいですか。

北村一輝 事務所に所属できたのが28、9歳のときでしたから大体10年ぐらいですね。途中4年くらい海外に行って間が空いていますので、6年ぐらいくすぶっていました。その期間は、くすぶりながらも、いつも自問自答していました。今自分が何をするべきか。という事が的確にみえるようになりだし、25歳くらいですかね。その頃からオーディションに通る確立も高くなっていき、監督との出会いにも恵まれました。

ジャケット(2月入荷予定)カットソー(4月入荷予定)/NEWYORKER BLUE、他スタイリスト私物

歯を削ってまで望んだチンピラ役。

ー 97年公開の「鬼火」という映画では、ゲイ役になりきるために新宿二丁目で通い詰め、その翌年公開の「JOKER 厄病神」ではチンピラ役を演じるために奥歯を抜き、前歯を削る。……何度もすみません。この情報は本当ですか?

北村一輝 それは本当です。役をひとついただくとその作品のことしか考えず、そこで全力を出す。役者は役を演じることに責任があるので、できる範囲はすごく限られていますけどね。やれることをできるだけ努力して現場に臨みたいだけです。

ー それにしても前歯を削るのは……。

北村一輝 当時は他の作品を抱えていなかった状況の中だからこそ、できたことです。歯はまた付けられますからね。歯を削れば外見がチンピラに近づく。だから削る。それしか考えていなかった。

ー 至ってシンプルですね。役作りをする上でまず何から始めるんですか?

北村一輝 まず台本を読みます。そして監督や共演者の方など分かる情報を聞いてから、役のイメージを膨らませます。

ー やると決めたらもうその役にできるかぎり近づこうと。

北村一輝 はい。ただ、作品は一人のものではありませんので自分の外見を変えたいときは、監督に確認します。ただ、歯を抜いたときは監督とそこまで話をせずに抜いちゃったから、みんなびっくりしていました。僕としてはメインの役どころじゃないから、軽い気持ちで抜いてしまいました。ただ、今はある程度相談する時間と余裕を頂けますので、みんなの意見を聞き、一番よい方法をチョイスしています。

名前なんかいらない。役で覚えて欲しい。

ー お話を伺って、シンプルに俳優という仕事に向き合っているというか、受けた仕事に対し、ただただ100%取り組んでいるように感じます。

北村一輝 自分の役どころが見ている方に伝わればいいなと、思って演じているだけですね。

ー 映画『KILLERS』では殺人鬼役ですが、こういった日常にはない役どころのときはどうやって役作りするんですか?

北村一輝 この映画では監督が細部に渡り、細かく演出をしてくれましたので、お任せしました。今作に関してはほとんど引き算で、監督の指示を忠実に演じました。

ー そうなんですね。役者さんというのは演技することで、自分を出すものなのかと思っていました。

北村一輝 全くそうは思えません。僕は自分の名前ではなく、演じたその役名を覚えてもらえた方が嬉しいですね。

やっぱり家がすき。

ー オフはどう過ごしているんですか? 一人で神社など落ち着く場所に行って、数時間ぼーっとしたりされるんですよね?

北村一輝 昔はよくやっていましたね。真夜中に神社の前まで行ったりしましたね。今はそんなに時間もないですが、仕事とプライベートを分けて一人の時間を大事にしています。もうね、近所でうまいものを食べたらそれでいいかな? とか本気で思うぐらいですね。寿司とか肉とか。

ー 寿司と肉。いいですね。北村さんの趣味って何ですか?

北村一輝 いろいろありますが、そのほとんどが仕事の延長と捉えています。泳ぐのも操船するのも。仕事を忘れて好きなことは家のことです。家がもともと内装屋でしたので、子どもの頃から日曜大工をしていました。クロス張り、椅子作り、家具の作り替えを昔から見てきたせいか、部屋に置く雑貨みたいなものも好きでよく買っちゃいます。

ー 壁紙を自分で貼れるって意外ですね。

北村一輝 綺麗に貼れますよ。ちなみに家の壁は黒板にしています。壁を変えると空間がガラっと変わって楽しいです。

ー なるほど。じゃあホームセンターなんかに行くと結構楽しめるんじゃないですか?

北村一輝 大好きです。ホームセンターはかなり行きますね。内装関係の情報も入ってきますからね。広い店だったら何時間でも居られる自信があります。

ー なにか作ることが好きなんですね。そういえば北村さんのHPもかなり個性的ですよね。

北村一輝 (笑)。あれはほぼ全員に反対されましたが、僕の中でイメージができていて、少数派スタッフ2、3人ぐらいでつくりました。普通に格好いい写真を載せて、というのはつまらないと思ったんです。

『KILLERS』の製作秘話。

ー 英語の発音を勉強するために、外国人の方と一緒に暮らしていたと聞いています。『KILLERS』のためですか?

北村一輝 同居をはじめたのは撮影が終わってからですね。きっかけは監督から英語の発音についてかなり指摘を受けました。英語圏の人が観ても分かるように喋ってくれと何度もダメだしを受け、それまで自分の中にあった英語の発音がいかに伝わらないかを実感しましたね。

ー 自分の出演した作品を後で見返したりされるんですか?

北村一輝 基本的に観ます。今回の『KILLERS』はどういう風に仕上がっているのかなあ、とワクワクしながら観ました。やっぱり想像した通り、オープニングから洋画の雰囲気が前面に出ていて、日本の映画にはない作品になっていましたね。

ー 今作、自らアドリブを入れたシーンはありますか。

北村一輝 この映画に関してはないですね。もちろん監督とディスカッションは重ねましたが、最終的にすべて監督の指示で動きました。本当に細かく演出してもらって、あんまり自分からやることはなかったですね。

映画はみんなでつくるもので、最終的に決めるのは監督だと思っています。言われたことに対して自分なりにアイデアも出しますが、俳優は監督が言ったことを決められたアングルで、決められた場所で演じることが仕事だと思っています。

想像を絶するスタッフに会えたときが一番楽しい。

ー 役者をされていて、一番嬉しかったり楽しいと思うとき、逆に辛いと思うときはどんなときですか。

北村一輝 役者の仕事自体が好きですが、台本をもらって演技するまでに自分の頭の中でいろんなシチュエーションを考えて、こう来たらああしようと空想しているときが一番面白いかもしれないですね。そのイメージに近い形で演技できたときは嬉しいです。

嫌な思いをするときは、監督自体が全く分かっていないなと思うとき。そのときは悔しいです。普段そこまでイラッとするタイプではないですけど、撮影に入ると無防備で感覚が敏感になり、すぐ怒ってしまったり、嫌になったりと感情が出てしまい、言い方を間違えてしまうときは多々あります。

あまりにも納得ができない演出のときには(ため息)。これ全然面白くないのにな、と心の中で思っています。

ー そんなときは妥協するんですか?

北村一輝 それは、仕方がないです。監督が全体を見て決めるものです。できあがりを観たときに『なるほど』と思うときもあれば『やっぱり全然違うよ』というときもある。そこはある程度見えるようにはなってきていますけど、やっぱり合わないときは辛いですね。逆に想像を絶するようなことをされて、すごい面白くできたときは嬉しい。そういうスタッフに出会えたときっていうのが一番楽しいときかもしれないです。

いろんな演技ができるように、

洋服もいろんなものを着ていたい。

ー 普段どんなファッションをされているんですか?

北村一輝 自分らしくないもの、ずっと好きなものなど、たくさんあります。俳優は、ひとつの駒みたいなものだと思っていて、常にひとつにこだわらず、どんな役にも対応できる引き出しを増やしたいので、日常でいろんなファッションに挑戦します。

ー かっこいいと思う人や憧れの方はいらっしゃいますか?

北村一輝 たくさんいますね。年上年下関係なく、自分に持っていないものを持っている人は誰でもかっこいいと思います。子どもの頃スーパーマンをかっこいいと思った感覚は今もそのまま持っていると思います。だからこそ、世間でかっこいいと言われているものが普通に好きですね。取材で誰が最近かっこいいですかと質問されたときはスマップって答えちゃいます。

ー これから挑戦したいことを教えてください。

北村一輝 『KILLERS』は日本とインドネシアの合作ですが、これからもいろんな国の映画に出てみたいです。自分の足で世界各地に行き、いろんな人と出会い話してみたいです。『常識』に対して問を持ち、いろんな違いを感じてみたいです。人間としても、俳優としてもいろんな国の様々な文化を観て感じてみたいと思います。

『KILLERS/キラーズ』

キャスト:北村一輝、オカ・アンタラ、高梨臨 、ルナ・マヤ、黒川芽以、でんでん、レイ・サヘタピー
製作総指揮:ギャレス ・エバンス
脚本:ティモ・ジャヤント、牛山拓二
監督:モー・ブラザーズ
製作:日活、ゲリラメラフィルムズ
協力:ポイント・セット
配給:日活  (C) 2013 NIKKATSU/Guerilla Merah Films
全世界12カ国公開決定(日本/ジャカルタ公開中)

2013年製作/カラー/HD/シネスコ/5.1ch/日本・インドネシア/138

Vol.19 小暮徹

Vol.17 谷尻誠


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