HOW TO

スタイリスト森岡 弘が伝授! ビジネスシーンにおけるスーツの正しい着こなし術。


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styling_hiroshi morioka
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いまやスーツは、ビジネスのツールとして着る時代。つまり、コーディネートの細かな気配りが仕事の善し悪しにも影響を及ぼす力を持っているわけです。スーツにシャツとネクタイを合わせればOKという時代は、すでに過去のこと。今回はさまざまな雑誌や広告で活躍するスタイリストの森岡 弘さんに、「上昇志向があるビジネスマン」というテーマのもと、細部まで配慮の行き届いたスーツの着こなしを伝授してもらいましょう。

森岡 弘さん

NAVIGATOR
森岡 弘(もりおか ひろし)さん

男性ファッション誌『メンズクラブ』にてエディターとして活躍後、独立。1996年にクリエイティブオフィス「株式会社グローブ」を設立し、ファッションを中心に活動の幅を広げる。現在は俳優やアーティスト、文化人などのスタイリングを行なう他、イベントやショップのコスチューム、企業のユニフォームの制作などにも携わっている。


Q.01ビジネスマンとして最低限持っておくべきスーツは何着ですか?

ネイビーの無地はどんなシーンにも対応する万能アイテム。軽く織り柄があってもいい。
立派なフォーマルカラーであるグレー。ネイビーと区別した使い方ができるのでおすすめ。
シャープな印象がより強調されるネイビーのストライプ。線の細さやピッチで差をつけて。

A.01ネイビーの無地をメインに、グレーの無地とネイビーのストライプが必要です。

まず1着目に持っておきたいのがネイビーの無地です。ブラックだと冠婚葬祭用の色になり、どうしても堅いイメージがつきまといますが、ネイビーであればフォーマルかつスマートなスタイルがつくりやすく、Vゾーンの組み合わせもしやすい。2着目、3着目にはグレーの無地とネイビーのストライプがいいでしょう。グレーはビジネスシーンでもしっかり通用する色で、且つネイビーとの対比もつくので気分のリフレッシュにもなります。ストライプは線が細く、ピッチが狭くなるほどドレッシーになるので、ビジネスの中でも特に堅いお仕事をされている方は柄の細かいスーツを選ぶことをおすすめします。


Q.02スーツの形はどんなものを選ぶのがよいのでしょうか?

A.02タイトではなく、“シャープ”なシルエットをつくるように心掛けてください。

自分のサイズに合ったものを着ることがスーツでは重要です。しかしながら、そこに“タイト”な要素は必要ありません。モードスーツのようにデザイン性を重視した形のスーツは、ビジネスシーンにはそぐわないのでご注意を。 最近は芯地を極力ぬいたイタリア系のスーツが多く、昔ながらのブリティッシュなスーツに比べて柔らかい印象になりますが、仕立てがしっかりしているので適度に引き締まりがあり、シャープに見せることができます。もちろん、カチッとした固い仕立てのブリティッシュ・スーツの人気も健在なので、好みによってどちらかを選んでください。但し、くどいようですが“細すぎ”は禁物です。


Q.03ネクタイはシーンに合わせて変えた方がいいですか?

【Large Dot】
ドットの間隔が大きく開いたネクタイ。コーディネートに柔らかさをもたらします。
【Small Dot】
柄が細かくなるとフォーマル度が高くなるため、会議や商談などの場面におすすめ。
【Large Paisley】
トレンドのペイズリー。このタイのような大柄の場合は、会食など比較的カジュアルなシーンに。

A.03柄の細かさによって印象が変わります。それを使い分けるのが有能なビジネスマンの条件です。

ネクタイは柄が細かければ細かいほど、ドレッシーな印象になります。これはドットに限らずレジメンタル柄にも言えること。好みで選びがちなネクタイですが、シーンに合わせてこの法則を適用するだけで周りから得る印象は大きく変わります。 例えば、会議や商談などの重要な場面では細かい柄のネクタイを選ばれたほうがきちんとした印象を演出でき、周囲からのイメージは格段にアップするでしょう。会食などのカジュアルな場面では、ペイズリー柄のネクタイで遊んでみるのもいいかもしれません。その際は、無地のスーツを着たり革靴は黒を選ぶなど、他のアイテムで引き算をするよう意識してください。


Q.04ポケットチーフを差すと、気取ったように思われませんか?

【TV Fold】
ビジネスからカジュアルシーンまで幅広く対応するTVフォールドは、端正な印象。
【The Puff】
ふんわりと華やかな印象のパフ。面積を多くするとカジュアルになるので注意を。

A.04そんなことはありません。堂々と差して大丈夫です。

日本だとチーフを差すとなんとなくキザっぽくなって恥ずかしい、という風潮があるのかもしれません。しかしチーフを差すこと自体はまったくルール違反ではありません。若手、中堅であればTVフォールドで差すのが無難。年齢も上がり、役職についている方であればパフにしても問題ないでしょう。あとは色に注意してください。色で主張すると“お洒落感”が出過ぎることも。ビジネスシーンではやり過ぎになってしまうので、ホワイトかグレーをセレクトすると間違いはありません。素材はスーツの生地とよく相談を。重めの生地にはシルクかコットン、夏場の軽い生地にはリネンがおすすめです。


Q.05ジャケットのサイズ感について、細かなところで気にするべきポイントはありますか?

【OK】
シャツの袖がジャケットから出ることで全体の色のバランスが整います。
【NG】
シャツの袖が出ていないとどこかのっぺりとした印象になり、暗くなりがち。
【OK】
ヒップがちょうど隠れる着丈が正統派スーツの正しい着こなし。
【NG】
着丈が短いと全体のバランスが悪くなり、見た目も損なわれてしまうので注意が必要。

A.05袖丈、着丈を意識するだけで周りとの差がつきます。

シャツの袖をジャケットから出すのが正しいスーツの着方です。手をピンと前に伸ばしたときに、手首のくるぶしの指1本分くらい手前にジャケットの袖を合わせましょう。そこから1~1.5センチくらいシャツの袖がでるのが理想です。それと最近、着丈の短いジャケットを着ている方を目にする機会が多くなりました。しかし、正しいスーツの在り方として、ヒップが隠れない短いジャケットは、間違った採寸であることを知っておいてください。正しい着丈のジャケットを選ぶと、余計な洒落感が省かれて、凛とした表情を獲得することができます。


Q.06ブリーフケースはどんなものを選んだらいいですか?

A.06レザータイプを持っておけば間違いないです。

最近は軽くて丈夫なナイロンのブリーフケースが人気のようです。それも決して間違いではありませんが、革靴、ベルトに合わせてブリーフケースもレザーにすると一体感が生まれ、全体が引き締まって見えます。 加えて、持ち方にも注意してください。最近はショルダーストラップが装着できる2WAYのアイテムがありますが、ストラップを肩掛けするとスーツの生地が傷みますし型くずれの原因に。そういったことが起きないように、ブリーフケースは手持ちを心掛けるようにしてください。


Q.07スラックスのレングスはどのくらいにすればよいでしょうか?

A.07裾幅20センチ程度のスラックスで、ワンクッションかハーフクッションになる長さが理想です。

ボトムのレングスは裾幅によって変わります。昔に比べて現在はスラックスの裾幅が狭くなり、およそ20センチ前後が主流だと思います。つまり靴のタンが隠れるくらいの幅。そのくらいであれば、スラックスのたるみがかるく出るくらいの長さがベストです。仮にもっと裾幅が狭い場合は、裾のプリーツが緩やかにカーブを描く長さにしてください。しかしそれほど裾幅が狭いと、スラックス自体のシルエットもかなり細くなっているはずなので、そういったボトムは若い人にしかおすすめしません。


Q.08小物類はどんなものを揃えておくのがいいですか?

A.08時計やタイピンがあればいいでしょう。仕事に自信がついた人はカフスに挑戦してみてはいかがでしょうか?

時計は飾り気のないシンプルなものを選ぶのがベター。靴、ベルトに合わせて時計のベルトも同じ素材をセレクトして統一感をだしてください。タイピンはクラシックなアイテムなので、威厳を感じるスタイルの中にさり気なく使うと、よりスーツスタイルが決まって見えます。問題はカフス。これはもともとスーツのアクセサリーとして考案されたものなんです。だから、仮にフレッシュマンがカフスボタンをつけると少し生意気な感じに取られてしまう。それなりの役職について、仕事に対して気概を持っている人が、これから挑戦する分には問題ないと思います。その際も、遊びすぎないデザインのものを選ぶように注意しましょう。


CONCLUSIONビジネスシーンでのスーツの着こなしは、“好印象”を優先させて!

ビジネスシーンはあくまで仕事をする場所であって、おしゃれをする場所ではありません。したがって着こなしにおいても、周囲からの“好印象”を勝ち得ることが一番重要な任務になります。

カジュアルな場面では、自分らしい遊びを取り入れるのは自由です。それによって人の好き嫌いが別れるのは仕方がないこと。しかし、ビジネスの場においては“嫌い=リスク”を可能な限り排除することが成功への近道になります。

スーツを正しく着こなして、自分がいかに仕事ができ、ちゃんとした人間であるかを周囲にアピールしましょう。仕事では着こなしを見てもらうのではなく、自分という人間を見てもらう。これを心掛けてみてはいかがでしょうか。


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