尾崎雄飛の珈琲天国

うれしはずかしお持ち帰り


May 18th, 2016

text_yuhi ozaki
photo_ari takagi

珈琲を飲む。
毎日飲む。
朝の食卓で、午後の職場で。
夜だったらレストラン、かな。
何度も飲む。
考えてみれば、ゆったり座って珈琲を飲む至福の時間が一日に何度もあるのは幸せなことだ。
珈琲はとても安上がりな快楽の手段だと、僕は思っている。
そして、一日のいろんなシーンで何度も飲む珈琲の味は、みんな違ってみんないい。

しかしある日、大変に忙しい日。
朝はバタバタ、午後はデスクワークが山積みだ。
せっせせっせと山を崩し、デスクの向こう側が見え始めた頃、
ああ、休憩したい、
ああ、珈琲が飲みたい、と思う。
ああ、考え始めたら珈琲中毒者はもう仕事にならない。
けれども、ゆっくり休憩するヒマは、今日はない。

あ。
そうだ、珈琲、買ってこよう。

近所の珈琲屋さんへ急ぐ。
昔は近所の喫茶店が、会議のために珈琲の出前なんてしてくれたものだったけれど、最近は見かけない。
その代わりに、気軽に珈琲を買ってお持ち帰りできる珈琲屋さんが増えた。
世の中は昔よりも忙しくなっているのだろう。

珈琲屋に到着。
何にしようか。
じゃあ、

ハンドドリップ珈琲ください!

美味しいお店のハンドドリップ珈琲は抽出時の湯温の管理がしっかりされていて、90〜93度ぐらいまで冷ませたお湯を使うことが多い。
しかし、珈琲の味は温度が下がるにつれて変化するから、淹れたての湯温を保ったまま事務所まで持ち帰らなければ、珈琲の愉しみを少し失ってしまう……。

そこで僕はスッと、持参した保温マグを取り出す。

コレに入れてください。

かくして僕は、ほとんど温度を下げずに持ち帰った珈琲を愉しみながら、デスクに平地を取り戻したのであった。

また同じような別のある日。
珈琲屋に到着。
何にしようか。

あ。
今日は保温マグを忘れてしまったな…。

じゃあ、カフェラテを熱めでお願いします!

エスプレッソ系のドリンクは、そもそも珈琲の抽出時に熱湯(蒸気)を使うから、湯温がアツアツでも味に変わりがない。
お持ち帰りの間に冷めていくから、デスクに戻って飲むときにはちょうどいい温度になっているはずだ。
もちろん、カプチーノでもアメリカーノでも同様で、たいていのお店で持ち帰り用のために熱くして作ってくれるだろう。

実を言うと、今日はバタバタしつつも、少しも休憩が無いほど忙しいわけではない。
空はよく晴れて、5月の陽気が気持ちいい。
このまま公園かどこかで休憩しようかな。
それならば、少しばかりオヤツを食べたいなあ。

喫茶店で座ってゆっくり休憩するなら、ケーキやプリンなんかもいいのだけど、ちょっとした休憩にはオーバーだ。
そんなとき、珈琲屋さんのお持ち帰りできるオヤツならちょうどいいサイズの物が揃っている。
ビスコッティとか、スコーン、チョコレートブラウニーやなんか。

サクッと食べられるオヤツを買って、いざ休憩。

珈琲を飲んで休憩をするのは、リラックスできると同時に頭がシャキッとして、その後の仕事の能率も上がって、いいことばかり。
サボりではない良い休憩のために、珈琲のお持ち帰りをオススメしたい。

今月の一杯/軽井沢・丸山珈琲のブレンド「グロリオーサ」

近年、東京にも出店して大人気の軽井沢の名店「丸山珈琲」の25周年を記念して、スタッフの方が思い思いにブレンドした物のひとつ。
飲み始めは透明感のある酸味としっかりしたコクがある、順当に美味しい珈琲という印象。しかし、少し温度が下がると一気に豹変して、鋭くて重いコクとまろやかな甘味が出てくる、なんとも不思議な味。ブレンド珈琲は深いなあ、と思わせてくれる珈琲である。

PROFILE
尾崎 雄飛

2001年よりセレクトショップのバイヤーとして勤務後、2007年に〈フィルメランジ ェ(FilMelange)〉を立ち上げる。2011年に独立し、フリーランスのデザイナーとして様々なブランドのデザイン、ディレクションを手がける。そして2012年1月に自身のブランド〈サンカッケー(SUN/kakke)〉をスタート。現在、様々な商品のブランディングも務めている。

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