UNSUNG NEW YORKERS

Vol.18 他の場所には存在しないこの街のエネルギーとエキサイトメントに魅了される。


Dec 27th, 2016

Text and photos_Yumiko Sakuma

There is that energy, that excitement of New York, that can’t be found anywhere else.
他の場所には存在しないこの街のエネルギーとエキサイトメントに魅了される。

何年か前にイベントの仕事で知り合ったジェニーは、ベトナム系のオーストラリア人だ。いきなり仕事でお金の交渉をする立場になったのだけれど、裏表のない正直な姿勢に好感を持った。

サンフランシスコに生まれ、オーストラリアで育った。大学を卒業してメルボルンでしばらく働いたのち、ロンドン、アムステルダムと転々とした。メルボルンで最初の仕事をしながら、友達と2人で<メルティング・バター>という紙の“雑誌”を始めた。

「葉書サイズの紙に、店が紹介されていて、それをもっていくとディスカウントを受けられる、というコンセプトの雑誌だったの」。

ジェニーがロンドンに、友人はベルリンに引っ越して、<メルティング・バター>はいったん終わった。何年か経って、アムステルダムに引っ越したジェニーは、レシピのブログをクリッピングするブログを始める。そのときに元パートナーが<メルティング・バター>という名前を使ってもいいよ、と勧めてくれて、プロジェクトは息を吹き返す。しばらくレシピのブログだった<メルティング・バター>は、だんだん旅のサイトに変貌した。

ブログとして誕生したがいまでは30人が寄稿する人気サイトになった<メルティング・バター>。

「旅に出るたびに、病的なほどにリサーチするタイプだったから、自分のおすすめのスポットを思いついた頃に紹介していた」。

そうするうちに時代が変わり、<メルティング・バター>は「ネタの宝庫」であるニューヨークに引っ越しをしたことで、ジェニーが積極的にポストをするようになった頃に、ブレイクした。

「ちょうどその頃から、フォロワーを持つことが財産になるようになった」。

仕事場兼オフィスがあるのは今注目のエリア、トゥー・ブリッジズ。

多数のフォロワーを持ちながら、広告はとらない、記事広告も作らないというジェニーの<メルティング・バター>は、プロジェクトに賛同するコントリビューターたちの努力によって、お金のやりとりがないまま進行してきたけれど、ジェニーの人間関係やクリエイティブな視点に目をつけた人たちから、だんだん仕事を頼まれるようになった。

「今は、それをどうやってサステイナブルな形にするかを試行錯誤しているところ」。

メルボルン時代に、一度旅行者としてやってきたときにニューヨークに激しく恋に落ちて、いつかニューヨークに住むと決めた。やってきてまだ5年にならないけれど、この街をベースにする気持ちは変わらない。

「戻ってきたとき、ニューヨークの街並みが見えた瞬間に、あのエキサイトメントを感じるの」。

PRやコンサルティングの仕事を手がける。


Navigator
佐久間 裕美子

ニューヨーク在住ライター。1973年生まれ。東京育ち。慶應大学卒業後、イェール大学で修士号を取得。1998年からニューヨーク在住。出版社、通信社などを経て2003年に独立。政治家(アル・ゴア副大統領、ショーペン元スウェーデン首相)、作家(カズオ・イシグロ、ポール・オースター)、デザイナー(川久保玲、トム・フォード)、アーティスト(草間彌生、ジェフ・クーンズ、杉本博司)など、幅広いジャンルにわたり多数の著名人・クリエーターにインタビュー。著書に「ヒップな生活革命」(朝日出版社)、翻訳書に「世界を動かすプレゼン力」(NHK出版)、「テロリストの息子」(朝日出版社)。

ここが好きなのは、人々がコトをやり遂げるから

こういうことができるのは、ニューヨークだから。


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