NEW YORKER

Special Contents

Autumn / Winter 2018

H.Morioka x S.Ueno

VOL.05

あのイタリアと。“一球入魂”の
コートが生まれました

ファッションディレクター 森岡 弘さん × LANIFICIO CERRUTI JAPAN代表 上野 伸悟さん ×
メンズニューヨーカーデザイナー 中島 陽一郎 鼎談

イタリアのチェルッティと日本のニューヨーカーのパートナーシップから生まれた一着を前に、商品誕生秘話から生地・ディテールへのこだわり、さらに着こなし方、現在のメンズスタイルの流れまで。ファッション界で活躍する3人が語るスペシャル鼎談。

VOL.05

織りネームに込められた、パートナーシップの証

── チェルッティとニューヨーカーの共同開発で作られた一着がついに完成しましたね。

上野
弊社では、以前から、日本でこだわりのものづくりができる、なおかつ伝統のあるブランドと取り組ませていただきたいと考えておりました。ニューヨーカーさんは歴史もあり、日本のトラディショナルを代表するブランドです。縫製はもちろんですが、素材にもかなりこだわりを持って最高品質を追求していらっしゃることから、イタリア本社の強い要望もあり、今回の共同開発が実現しました。デザイナーの中島さんとも、展示会などさまざまな場所でお会いしていて、意気投合したというのもありますね。
中島
大学生の頃から、国際的なテキスタイル見本市「プルミエール・ビジョン」に行ってはチェルッティさんのブースをドキドキしながら覗いていて。本当に憧れの生地メーカーさんだったので、今とても光栄に思います。
森岡
出会うべくして、出会ったという感じですね。
中島
そうだとしたらうれしいです。そして今回の企画については、一過性のコラボレートという形ではなく、あえて今後も続いていく関係性を見据えて「パートナーシップ」という形をとらせていただきました。
上野
それをもっともわかりやすく具現化したのがコートに付いている織りネームで、弊社チェルッティとニューヨーカーさんのロゴが横並びで入っています。これまで2年ほどお付き合いはありましたが、さらにこれからもパートナーとしてお付き合いさせていただくという思いを込めて。両ブランドの絆みたいなものですね。これはかなり革新的なことで、弊社としても初の試み。Mr.ニノ・チェルッティの了承も経た上で作っています。

── Mr.ニノ・チェルッティの承認を得たダブルネーム、凄いですね。さて、そのコートの制作過程で苦労された点などは?

中島
毎回なんだかんだ苦労しますよね。一緒に作らせていただいているので、こちらからの要望も伝え、チェルッティさんからの要望も伺い…ですから、見本を作ってもうまくいかないこともありました。イタリアと日本で時差もありますしね。
上野
最高品質にこだわるニューヨーカーさんですから、要求もかなりハイレベルで(笑)。このコートには、オーストラリア・クイーンズランド産の厳選されたウール原料を使用しています。さらに紡績、仕上げにまでこだわり、デザインも100%オリジナルです。毎回ドキドキハラハラの連続でしたが、その甲斐あって、チェルッティの素材の特徴でもあるナチュラルストレッチで、シワになりにくく、艶があり、落ち感がある…それらをうまく表現できたかなと思っています。

その人の佇まいを決める要は、“生地”選び

森岡
こうやってお話しを聞いていると、とんでもない一着が完成しましたね(笑)。だって、艶やかで、落ち感があって、機能も必要で。それが実際に、ここにこうして完成していることが凄いですよ。
上野
私もそう思います。通常は、こうやって形にしていく中で、どうしても反映できないという部分が出てきてしまうことも多いんです。弊社にもこだわりがありますが、そこを同じようにこだわり抜いてくださるニューヨーカーさんだからこそ、生地と製法がマッチングして、お互いに満足のいくものが皆様にご提案できるんだと思います。
森岡
妥協がないからこそ、素晴らしいものが生まれるんですね。仕事上、よく聞かれるんです。「どうしたら洒落た感じになりますか?」「センスよく見えますか?」と。日本の男性は海外のエグゼクティブと違い、まだまだ自分の役職のレベルに合った服にランクアップさせていくという意識が薄いんです。でも、佇まいってとても大切じゃないですか? 立場が上になったら、信頼関係を築くためにも、ある程度着こなしにも格が必要になりますよね? そこで重要になってくるのが“生地”なんです。だから、そう聞かれた際には「服の生地をワンランク上げてみてください」とアドバイスしています。生地をアップグレードするだけで見え方や佇まいは本当に変わります。サイズを合わせるのと同じように、生地を一度しっかりと見直してほしいものです。日本人はどうしてもデザインに走りがちですが、生地選びこそ格を作る上で重要だと話しています。

目指すはハイクオリティで、ハイパフォーマンス

── では、ディテールについてのこだわりもお伺いします。

中島
コート自体は、昨シーズンからスタートしているビジネスウエアにアウトドアとスポーツウエアの要素を入れ込んだ「NEWYORKER ACTIVE」というシリーズになります。表生地は、チェルッティさんと共同開発した生地「エアロシールド」です。裏側には、透湿防水の機能を持ったフィルムを貼りました。さらに、NASAが開発したアウトラストといわれる、体温調整機能を持った中綿ライナーが付いてきます。
上野
さすがの機能ですよね。
中島
風も防げて、湿度も逃してくれる。なおかつ、通勤中の電車車内などが暑ければ体温調整もしてくれるという。
森岡
やはり、とんでもないコートだ!(笑)
中島
ハイパフォーマンスファブリックといっていいと思います。
森岡
防水といってしまってもOKですか?
中島
はい、大丈夫です。
森岡
これ、防水タイプという生地感ではないです。防水加工が施された生地ってもっと硬いイメージじゃないですか?
上野
生地のやわらかさをキープしたまま、機能性もしっかり備えているってうれしい限りですね。通常、機能性を持たせると生地は硬くなってしまいがちですから。
中島
そもそも今回は、チェルッティさんのしなやかでやわらかな生地の品格を保ったまま、それをどうハイスペックに落とし込んでいくか?というところからスタートした企画だったので。さらに機能面でいえば、背中にミリタリーウエアなどでよく使われるアクションプリーツを施しているのもポイントです。例えば自転車にまたがっても、よりアクティブに動けるよう工夫しています。
上野
ディテールのこだわりも、さすがですね!アクションプリーツとか「NEWYORKER ACTIVE」とうたっているだけあってうまく、バランスよく出来ていますね。
森岡
このコートは、ビジネスはもちろんですが、もっと幅広く使えると思います。着こなし上手な方なら、おそらくこの一着でほぼ全てのシーンを網羅できるような気がします。色は何色あるんですか?
中島
今回はこちらの1色のみの展開です。森岡さんだったら、具体的にどんなスタイリングをされますか?
森岡
個人的には、ネイビーとかブルーとか、ワントーンとかグラデーションで全体をまとめたいですね。簡単な着こなしですが、相当スタイリッシュに見えると思います。パッと見の印象はビジネスのイメージかもしれませんが、実際、僕にはカジュアルにも映りますので、例えば今流行りの白いスニーカーを履いても格好いいんじゃないでしょうか。リラックスしたスウェットパンツにも十分いけると思います。スポーティなニュアンスのあるコートですから、スニーカーとの相性は間違いないです。
中島
スニーカー、いいですね!
上野
今イタリアでもそういうスタイルが流行っていますよ。
森岡
世の中の気分的に、おしゃれして決める時は決めるけれど、いつも決め過ぎるのはちょっと格好悪い、みたいな流れになっているじゃないですか。そういう意味で、このコートは“抜きやすい”アイテムかもしれないですね。いい意味での抜きやすさがある。ドレスダウンしてもしなくても、貴方任せでお好きにどうぞというユーティリティなアイテムじゃないでしょうか。
中島
やはりその両面で使えるのは、この生地感だからだと思います。
森岡
そうですね。生地のやわらかさ、落ち感、それらが決め手ですね。大人のカジュアルにはどこかシックな雰囲気とか、装い感などがあった方がいいと思うんです。決して子どもっぽくなく、頑張ってるおじさん風にもならず(笑)、さりげなく「あの人素敵だね」という見え方になるコートだと思います。

着て、動いて、Feel a sense of sports

中島
上品な見た目とは裏腹に、かなりタフな作りになっていますので、とにかく着ていただきたい。そして、生地感をはじめチェルッティさんとニューヨーカーの“ものづくり”へのこだわりを感じていただけたら。作り手側の僕たちは、その思いをコートを通じてお客様と共有できたら幸せです。
森岡
これは実際に手に取って、袖を通してみないとダメですね。着てみて気づくことがたくさんあるコートだと思います。「こんなにやわらかいんだ」「こんなに雨を弾くんだ」「こんなに動きやすいんだ」と。体感することで気づきを楽しんでいただきたいですね。最近“一球入魂アイテム”みたいなものが気になっていて、作り手側に「気合いを入れて作りました!」という自信みたいなものがあれば、あとはどうぞお好きに着てくださいっていうのが、ものづくりの方向性だと思います。こういう風に着てほしいより、これを気に入ってくださったのならお好きにどうぞ。自分たちのものづくりに自信を持っているから、どう着ていただいても構いません、みたいな。ジーンズを合わせようが、ビジネスシューズを合わせようが、何を合わせようがこちらは大丈夫ですから自信を持って好きなように着てくださいという感じ。僕はこのコートがそんなアイテムに思えます。
上野・中島
ありがとうございます!
中島
そういう意味では、襟についたネーム部分も僕たちの“一球入魂”の表れです。「Feel a sense of sports」〜スポーツの要素を感じてください、このシリーズの背景にある裏テーマをさりげなく盛り込んでいます。
上野
“Feel”感じるっていうのがいいですよね。
中島
まさに、着て、感じていただけたら。
森岡
感じて、気づけと!(笑)
中島
色いろなシーンでこのコートを着て、色いろなことをやってみた時に「これもありか」「こういうのもありか」と気づいていただける一着になっていると思うので。
森岡
人の想像範囲って自分の今までの経験値の範囲でしかないから、着こなしの幅が広がれば行動範囲も広がっていきます。服には力がありますので、着てみて、体感して世界を広げ、“Feel”しないともったいないですよね。

Profile

Shingo Ueno

上野 伸悟(うえの しんご)さん

本場イタリア生地メーカーにて学んだ経験を生かし、イタリア紳士服地日本法人にて某服地ブランド国内シェア拡大に大きく貢献する。その後、国内ニットOEMにてアパレルの構造を学び、2014年7月よりイタリア服地ブランド、LANIFICIO CERRUTI JAPAN(株)メンズマーケット部門の責任者に。翌2015年1月同社代表に就任する。

Profile

Hiroshi Morioka

森岡 弘(もりおか ひろし)さん

男性ファッション誌『メンズクラブ』にてエディターとして活躍後、独立。1996年にクリエイティブオフィス「株式会社グローブ」を設立し、ファッションを中心に活動の幅を広げる。現在は俳優やアーティスト、文化人などのスタイリングを行なう他、イベントやショップのコスチューム、企業のユニフォームの制作などにも携わっている。