NEW YORKER

Special Contents

Autumn / Winter 2019

BLAZER

VOL.10

シルエットも素材感もどこか懐かしい
変わらぬ無骨さが今、選ばれる理由

ニューヨーカーメンズデザイナー 中島陽一郎 インタビュー

時代を超えて多くのファンをもつニューヨーカーの“紺ブレ”。ネイビーブレザーは定番以上の存在と語るデザイナー中島の思いとともに、今シーズン新解釈で復刻した「アルパカツイードのブレザー」の魅力に迫る。

VOL.10

ブレザーがニューヨーカーを有名にしてくれた

── 数あるアイテムの中でニューヨーカーにとってブレザーの存在とは。

中島
ブレザーは19世紀に英国で誕生しました。日本に定着したのは1960年代。1964年に開催された東京オリンピックの開会式で、日本選手団が日の丸色の真っ赤なブレザー姿で入場行進をした光景は、多くの日本人の記憶に刻まれました。実は、その赤い生地を納めたのがニューヨーカーの生みの親である大同毛織(現・ダイドーリミテッド)です。もう一方で、60年代後半から70年頃にかけてアイビースタイルの代名詞ともなる“紺ブレ”が注目されたことから、一大ムーブメントを巻き起こしました。まさにその流れの中にいたニューヨーカーにとって、ブレザーはブランドの知名度を一気にあげてくれたアイテム。現在でも「ニューヨーカーといえばブレザー」といっていただけるほど、ブランドの「核」として重要なポジジョンを占めています。

── 仕立てやデザインなどで特にこだわっている点はありますか。

中島
設立当時から一貫して変えていない点がいくつかあります。ひとつは、肩まわりの造形です。比較するとわかりやすいのですが、厚手の裄棉を使い、肩がこんもりといかり肩のようなシルエットになっているのがイギリス式。逆にアメリカントラッドは丸みのあるラインを描き、ニューヨーカーのブレザーもそれに当たります。ナチュラルショルダーメイクと呼ばれ、薄手の肩パッドを使い3枚ある裄棉を順番に縫い合わせていくニューヨーカー独自の製法によって、自然な肩まわりの造形が生まれています。また、前肩が多い日本人の体型を考慮し、前釦を閉じていても腕が動きやすいように肩線をカーブさせている点も受け継がれているポイントです。

── 生地についてはいかがですか。

中島
耐久性のよい生地づくりも、設立時から変わらず大事にしている点です。近年、軽い着心地が求められていますが、軽さを最優先すると単糸(1本の撚り糸)を用いた生地を使用しがちで、それでは耐久性が劣ってしまう場合もあります。そこで、ニューヨーカーでは軽さを意識しながらも、必ず双糸(2本の単糸を撚り合わせてつくった糸)を使うようにしています。撚りの回数、さらには染色に至るまで、紡績会社の方と綿密な打ち合わせを行い、徹底的にこだわりのあるものづくりを貫いています。

── ブレザーは無地のイメージがありますが、染色にもこだわっているのですね。

中島
ニューヨーカーのブレザーは無地のように見えて、実は無地ではありません。糸をつくる前の羊毛の束の段階から染料をスプレー状にかけていき、特殊な霜降り調に染織する加工を行っています。よく見ると濃淡があるのがおわかりいただけると思いますが、この工程によって深みのある色が実現します。

見えない細部にこそこだわる

── ここまで独自の製法についてお話しいただきましたが、逆に時代とともに変化させている点はありますか。

中島
時代に応じて日本人の体型も変わってきているので、先ほどお話しした肩線なども縫いの位置を3ミリずらすなど、常にミリ単位の調整を入れています。

── 3ミリとは驚きました。

中島
はい。肩線の位置を3ミリずらすだけでも、自ら工場に行き確認しています。デザイナー自らが縫い位置の修正を確認するために工場に行くというのは、珍しいことかもしれません(笑)。実際に今回も、ゴージのラインやステッチの入れ方、ラペル幅などミリ単位で調整をかけました。見た目ではわかりにくいところに、しっかりこだわっている…だからこそ、テーラーリングならではの上質な着心地が得られると思っています。

── ここからは、その今シーズンのブレザーについてお尋ねします。

中島
今季ご紹介するのは、いわゆるI型といわれる3つ釦段返り1つ掛けブレザーです。1960年代にブームになったアイテムを、ブランド設立55周年の記念に復刻いたしました。

── どこか懐かしい印象もあるブレザーですね。

中島
そうですね。その理由は、この生地にあります。今回はアルパカを使ったツイード生地で“懐かしいけれど新しいブレザー”を提案させていただきました。ここ数シーズン、大きめのラペルが目立ってきているので、このブレザーも幅広のラペルに少し洗練さを添えながら調整しています。間延びしないように着丈は若干短くし、アメリカントラッドならではの“無骨さ”みたいなものをあえて感じさせています。

── どのような着こなしがおすすめですか。

中島
アルパカツイードですので、コート感覚で着ていただいてもいいですね。最近は暖冬傾向で寒くなるまでに時間がかかります。ですから、ブレザーをコート代わりに。スタイリングでいえば、秋口はTシャツやカットソーの上に、冬は同色のネイビーやボルドー系のタートルネックニットなどの上にさらりと羽織っていただいて、リラックスしながらも、より無骨さを楽しんでいただければ。あえてブレザーをカジュアルに着るのも今の時代らしいのではないでしょうか。もちろんシャツ&タイを覗かせた正統的な着こなしにも間違いなく活躍するアイテムなので、それぞれの気分で、自由に楽しく着用していただけたらと思います。

選択基準は、10年後も使える一着かどうか

── ブレザーを選ぶ際のポイントについて教えてください。

中島
ご自分の好きなものをお選びいただくのが一番だと思いますが…ブレザーやジャケットは安い買い物ではないので「このアイテムと長く付き合えるか」ということを想定して購入していただくのが一番かと思います。選択基準は“10年後も使える”かどうか。ニューヨーカーはブレザーに限らず、自信をもって10年以上着ていただけるアイテムを送り出しておりますので。中でもブレザーはそのこだわりが強いアイテムだと思います。

── 服をデザインする上で中島さんが大事にしていることとは。

中島
これからの時代、服がもっているものづくりのストーリー性が重要になってくるのではないかと感じています。プロダクトとして完成するまでの間にどれだけ背景を語ることができるか。インターネットなどで簡単に情報が手に入る時代だからこそ、そこからは手に入らないストーリーを大事にしたものづくりを心掛けていきたいと感じています。英国などに行くと「祖父から譲り受けたジャケットを大事に着ている」といった話をよく耳にするのですが、それは「もの」ではなく「ストーリー」を受け継いだということ。これからのファッションはそういう流れになっていくのだろうと思いますし、そうあるべきだとも思います。ですから、このブレザーも将来的にヴィンテージとして受け継がれていってほしい、そこを意識しながらつくりました。耐久性などへのこだわりはもちろんですが、ツイードの表面感やシルエットにしても10年後も着ていただけるよう、あえて懐かしく、無骨に見えるようなつくり方にしています。今風にデザインしてしまうと時代とともに流れていってしまう可能性もあるので。10年後もこのブレザーを大切に着てくださっている方がいる、そんな一着になったらデザイナー冥利に尽きますね。

Profile

Yoichiro Nakajima

NEWYORKER Men’s デザイナー
中島陽一郎